あな恐ろしや

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 「俺が浮気をするのはおまえが悪いからだ。」とあろうことか、妻を前にそう高言した男がいた。
 いやおうなくその場に立ち会わざるえなかった私は驚愕し、以来その男を畏敬している。
 男児かくあるべし。
 それで家庭が崩壊しないのだから見上げたものだ。
 小心者の私には口が裂けてもそんな言葉は吐けそうもない。
 自分の意志を貫く為には面倒、煩わしさ、なにするものぞと立ち向かう、ううん、立派。
だけどと私は思う。体力、気力に余裕のあるうちはとりあえず力でおさえこめるとしても、たとえばいくさき、脳溢血で倒れたりすることもあるだろう。そんなとき、どの面さげて妻の介護を受けるつもりか。多少なりと想像力があれば考えの及ぶところだ。私など、そんなことを考えているうちに身動きが出来なくなってしまったが熟年離婚をもちだされて寝耳に水とあわてるのは自分の不始末を都合よく忘れるからだと思っている。
 女というのは執念深いぞ。プライドをずたずたにされて笑ってすますはずがない。面従腹背、じいっと復讐の機会をうかがっていてチャンスとみれば牙をむく。
 聞いた話だ。道楽者だったおじいちゃんが倒れて老妻が付き添った。生命はかなくおじいちゃんはそのまま意識を回復することなく亡くなったそうだが、下半身にはつねりあげられた紫色の痣が無数についていたということだ。
 あな、恐ろしや。
 おとぎ話もたいていは因果応報で終わっている。
 杞憂ですめばそれにこしたことはないのだが……。

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