増毛へ(1)

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 JR北海道に“ライズ”という広報誌がある。そこから突然、“ぶらり一日旅”に出演してもらえないかと電話がきた。
 JR北海道には土・日・祝日限定の“一日散歩きっぷ”というのがあって決められた範囲内であれば普通・快速列車の自由席が一日、乗り放題で2040円、子供は半額という。そのキャンペーン企画だった。どういうわけか私に白羽の矢が当たったらしい。
 そのきっぷを使うつもりになって一日好きなように旅をする、費用はすべて先方持ち、日当も出る、一も二もなく引き受けた。
 旭川からだと美唄、新得、上川、中川、増毛がそれぞれの方面の限界、しかしけっこう遠くまでいけるものだ。
 本当にどこへでもいいんですよということで久しぶりに海を見に行くことにした。
 そこで増毛へ。

 朝というにはやや遅い、十時すぎ旭川駅出発。普段の行いのせいだろうか心配だった天気もとりあえずいい。
 深川で担当の佐々木さんと合流、初対面だったがそんな堅苦しさを感じさせない。二両編成のディーゼル車は便数が少ないせいもあるのだろう、ほぼ満席だ。
 北一巳、秩父別、質問ぜめにあいながら、晩秋の野をがたごとと列車は進む。もえ人気で一時は大騒ぎだった恵比島も今はひっそりとおさまっていた。
 昼過ぎに留萌着。乗客は皆降りて私と佐々木さんだけが残る。ここで昼食支給。にしん親子弁当は可もなく不可もなし。弁当を食べ終わっても列車はいっこうに動き出す気配がない。本は持ってきたがあえて手にする気にもなれず手持ちぶさたのままぼんやりと外を見ている。留萌は大きな町だと思っていたが、こうして車中から眺めると意外にこじんまりとした感じだ。左手は駅舎に阻まれているが、右手は線路の柵のすぐ向こうがもうパークゴルフ場、老人が数人、のんきそうにプレーしている。パークゴルフ場の奥は水田だろうか、その先は水産加工場、そしてなだらかな山が連なっている。もの思いに沈みかけて人の気配に我にかえった。

 ぱたぱたと客が乗り込むと待つ間もなく列車は出発。すぐに右手に海が見え、たちまち車窓いっぱいに拡がっていく。
 色彩と質感を欠いた海、薄曇りの空は海と同化し、空は海となり海は空になって、透明の硝子に定着している。 
 車体を傾け右に大きく湾曲しながら列車は進む。
 さあ増毛だ。

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