女友達

 そんなことがなかったおかげでいまだにいい関係が続いている女友達がいる。
家が近かったから、子供のころにも一度ならず遊んだはずだが、中学で初めて同じクラスになって、いつの間にか姉弟のように親しんでいた。
私のどこかに母性本能をくすぐるものがあったのだろう、彼女を紹介してくれたり、なにかと世話をやかせたものだ。
そのくせ、どうも私は恋愛の対象にはならなかったようで、そこらあたりの機微を理解するのはむずかしい。
当然、女房とも旧知の仲で家に来ると私をさておいて、二人、更年期の話なんかに熱中している。
この辺の芸も男にはなかなか出来ないところで妙に感心させられる。
 数年、しゅうと、しゅうとめの介護で大変だったらしいが、ようやく開放されたとかで、先日、酒を呑む機会があった。
ほろっと酔って、そう言えばおれたち、近所だったのに一度もお医者さんごっこなんてしなかったな、ちらりと大人げない言辞を披瀝すると、なにそのうちに寝たっきりになったら一度ぐらいはおむつを替えにいってあげるからとかるくいなされた。
 男、63歳いまだにこれだもの、女房、子供にだってばかにされてもしかたがないなとほぞをかむ。

(2010年3月19日 北海道新聞「朝の食卓」掲載)

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