焼き物の道具にもいろいろユニークな名前があって、たとえば器の深さと口径をはかる竹製のものを“トンボ”と呼ぶが、これなど見るからに竹とんぼを連想させる。
“ネコ”という柄ゴテもおそらくその先端が招き猫の手のように見えるところからつけられた名前だろう。ともかくそういうふうに持って説明すると大抵の人が納得する。細口の壺など手の入らない形状のものの内側を成形する時には必ず使う。
“ダンゴ”とは皿や鉢の内側の成形に使う文字通りだんご状の木塊だが、これだってしっかり使い込まれたものを見るとただならぬ気配を感じたりする。おぬし出来るなと言ったところ。道具を見れば腕がわかるという言葉がこの世界にはまだ生きている。
自分の手に合わせ、使いながら削ったり、紙ヤスリをかけたりして、微調整を繰り返し、満足できるまでに仕上げるにはけっこうな時間がかかる。思い入れが生ずるのももっともなことだと思う。
製品に合わせて一つ一つコテを用意する几帳面な人もいれば、一つのコテを使いまわして何でもこなす人もいる。どちらかと言うと私はけっこう道具は用意する方だ。
桂、桜など、堅い木で作られたコテはまさに末代もの、衣鉢を継いだつもりでいるのか有名だった先代の形見だと黒光りするコテを得意気に見せびらかされたこともある。
息子と仕事をしているが、いずれ私の道具もそうして引き継がれることになるのだろう。そう思うと日常何気なく使うコテにもある感慨が沸く。
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