ロクロ

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 陶芸家の仕事というと、まずロクロを挽いている姿が思い浮かぶかもしれない。取材を受けてもいざ写真という段になるとできればロクロで、と注文が入る。たしかに私たちの数多い作業の中でももっとも絵になる場面かもしれない。
 雑用をのぞけば、まず教えられるのがロクロ。使う方も使われる方にもロクロぐらいはという頭がある。腕さえ上がればロクロ師として一人立ちすることだってできた。世間一般で考えれば車の運転免許といったところになるだろうか。
 最初はまずパイ挽き。パイ、すなわち盃状のものを形を揃えながら挽き続ける。手が決まるまではひたすらそればかり。我流ながら多少の下地があったので私の場合はきっ立の湯呑で始まった。
 一日百個、十日で千個。まあ三、四か月をめどにまず一万個やってみなさい。

 大窯を焚いた翌日などは、一日自由にしていいと言われることもあったが原則的には日常の作業を済ませたあとの時間でやるのだ。最初の頃は一日二十個も挽けただろうか。
 もっともこれは通過儀礼のようなもので二、三千個、半年も続けるうちにうやむやになっていく。息子にも同じことを要求したがやっぱり同じ結果になった。
 昔は腕がいい職人なら湯呑を一日千個は挽いたという。徳利など多少心得があれば誰だって外見は揃えるが、容積となると話は違う。それが七勺なら七勺とぴたりと揃えたというからたいしたものだ。

 独立したあとも二百、三百とまとまった個数の仕事がよくあった。お金をいただきながら練習させてもらえるとうれしかったものだ。最近はそういうまとまった注文がめっきり減った。うちだけではなさそうなので食器の需要が急速に減ったということだろう。これから腕を磨かなければならない若い人たちには気の毒な時代というしかない。

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