風邪かもしれない

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 ごほんと一つ咳をして台所の女房をうかがった。食事の準備に夢中で聞きもらしたか、反応がない。そこでごほん、ごほんとさらに大きく咳をする。
 どうも今朝は身体が重い。けっこう熱もあるんじゃないか。
 こんなに具合が悪そうなのにどうして女房は気付いてくれないのだろう。昔はちょっとしたことにだって目をとめてうるさいぐらいのものだった。
 別に大騒ぎしてほしいわけではないが、せめて、お父さんどうかした、ぐらいのことがあってもいいだろう。
 ようやく手渡された体温計を口に銜えて、これで高温だったら有無なく病院に行かされるだろうなと私は考えている。だけど低けりゃ低いで、大丈夫よ、大袈裟なんだからなんていわれて腹が立つ。なんとか希望通りの体温が計示されないものだろうか。
 子供の頃、幾度か入院生活を経験したが、そういえば日に3度の検温はたいてい指でこすって、調整していた。一度なんか、温度を上げたまま返して、ひどい目にあったりしたが、まあ、いよいよになればそんな手もある。
 正確に自分の体調を知っておきたいし、この状況にもっとも適応する体温も提示したい。
 私はハムレットのような心境で天井を睨んでいる。(2010年9月2日北海道新聞 朝の食卓掲載)

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